前投稿の「相続の基本」の続きです。

相続分には、民法が定める法定相続分と被相続人が遺言で定める指定相続分の2つがあります。
 なお、法定相続分より指定相続分が優先されます。

法定相続分

 民法では次のとおり法定相続分を定めています。
 なお、配偶者はいつでも相続人となります。
 ・第1順位; 配偶者 1/2  子     1/2 
 ・第2順位; 配偶者 2/3  直系尊属 1/3
 ・第3順位; 配偶者 3/4  兄弟姉妹 1/4

 同順位の血族が複数いる場合の分割割合は、等分になります。
 ただし、非嫡出子は嫡出子の2分の1であり、半血兄弟は兄弟の2分の1となります。

指定相続分

 遺言により、法定相続分とは異なった相続分を指定することができます。

 被相続人自身が築き上げてきた財産ですので、原則として自由に相続分を指定することができます。
 ただし、相続人には最低限留保された遺留分という制度がありますので留意が必要です。

相続の手続き

 相続に関する手続きは被相続人が亡くなった時点から始まります。

 相続は、被相続人の意志、遺言状、あるいは相続人の意見などを最大限尊重するのが通例です。

 特に遺言状の有る・無しや法定相続人の状況などによって相続に関する手続きは大きく変わってきます。

 相続の手続では様々なタイミングが厳密に定められています。素人判断で手続きを行うと取り返しがつかなくなってしまう可能性もあります。早めに相続に詳しい専門家などに 相談しましょう。

■相続発生後7日以内に行うこと  
(1)死亡届の提出(死亡診断書を添えて市区町村に提出)  
(2)死体埋葬許可申請書の提出(市区町村へ提出)  
(3)葬儀の準備(通常の葬儀はこの期間に行われます)  
(4)葬儀費用の整理(葬儀で発生した費用の領収書整理、相続税控除の際必要となります)

■相続発生後14日以内に行うこと  
(1)世帯主変更届  
(2)各種名義変更届け
・遺言書があるかの確認(公正証書以外は裁判所の検認が必要となります)
・相続人確定
・相続財産、負債の調査(金融機関では預金者の死亡確認と同時に講座を凍結します。以後遺産相続が確定するまで預貯金を引き出すことはできません)

■相続発生後3ヶ月以内に行うこと 相続放棄、限定承認の申請

■相続発生後4ヶ月以内に行うこと  
(1)準確定申告  
・相続財産の確定  
・特別代理人選定 
・遺産分割協議  
・遺産分割協議書作成  
・財産の名義変更

■相続発生後10ヶ月以内に行うこと
(1)相続税の申告・納付

遺産分割協議書

 被相続人が遺言書を残していればそれに従って財産を分割します。

 しかし、遺言書が無かった場合、また遺言書はあってもそこに記載のない財産がある場合は、相続人全員が相談して、誰が何を相続するかを決めていくことになります。その話し合うことを「遺産分割協議」といいます。作成される書類が遺産分割協議書です。

 「不動産は長男が相続する。株券は次男が相続する。絵画は妻が相続する。」と決めて、後々もめないように書面にしっかり作成します。

 亡くなった人の財産は、その人が亡くなった瞬間に相続人全員の共有となります。共有とは、所有権などについて複数の人によって所有されていることです。

遺留分

 被相続人の財産は、原則として被相続人が自由に処分することが認められれています。

 しかしながら、まったく自由かというとそうではありません。法は、これだけは最低限相続人に残されるべきだという限度を設けました。
 これを遺留分と言います。

遺留分の割合

① 遺留分の割合は、「法定相続分の半分」になります。

(例1)配偶者と子供が相続人

 ・配偶者の遺留分 4分の1

 ・子供の遺留分  4分の1(子供2人の場合は8分の1)

(例2)配偶者と被相続人の父が相続人

 ・配偶者の遺留分 3分の1

 ・被相続人に父の遺留分 6分の1

② 兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺留分の請求の仕方

 遺留分が侵害されているからといって、その侵害した行為が当然に無効となるわけではありません。
 遺留分を請求するには遺留分を侵害された相続人から遺留分を侵害している者に対し、遺留分の減債を求める旨の意思表示をすれば、効力を生じると解されています。