老後のお金」の続きです。

 成年後見等で相談に来る方は、一人暮らしの高齢者が主です。将来認知症になってしまったらどうしようと本気で悩んでいます。

 成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって、判断能力が十分でない方を保護するための制度で、この制度により助かる人が多いのも事実です。

 私は、成年後見制度について説明することはありますが、この制度が簡単に利用できるものではないという点を十分説明させていただきます。

 そもそも成年後見制度は、被後見人の財産を守ることが目的でできている制度と言ってもよいと思います。

 例えば何億円も持っている人が、被後見人になってしまったために、その家族は被後見人のお金に手が付けられず、死ぬのを待っているということもあるのです。

 成年後見人が付いたことで、お金の悩みごとが多くなったとする被後見人の家族も結構いますよ。

 また、相談者(判断能力がある人)に任意後見について進める方もいるようですが、安易に飛びつかないほうが良いと思います。

 

 成年後見制度の利用形態

①後見(判断能力が欠けているのが通常の状態の方) 

・老人性の認知症の方のために、介護の契約を結んだり、財産を管理する必要がある場合、成年後見人に契約や財産管理をしてもらう。

・交通事故などにより保険金を請求する必要がある場合、成年後見人に本人の代理人として請求してもらう。

②補佐(判断能力が著しく不十分な方)

・介護サービス利用契約などについて、補佐開始の審判と同時に介護契約をする権限(代理権)の審判を得た保佐人に手続きをしてもらう。

③補助(判断能力が低下している方)

・契約などを選任された補助人にサポートしてもらう。

成年後見制度の利用

 成年後見制度を利用するには、後見開始、補佐開始などの審判を家庭裁判所に申し立てる必要があります。

申し立てに必要なもの

・申立書

・戸籍謄本

・住民票

・診断書

・その他、申立手数料、登記手数料など

成年後見制度で制限されること

 これまで、後見制度又は補佐制度を利用することにより、一定の資格や職業を失ったり、営業許可等が取得できなくなったりするなどの権利制限に関する規定がありました。

 令和元年に成立した法律により、これらの権利制限に関する規定が削除され、今後は、各資格・職種・営業等に必要な能力を個別的・実質的に審査し、判断されることになります。

例1:建設業許可申請については、取締役等について「登記されていないことの証明書」の提出が義務付けられています。

例2:産業廃棄物収集運搬業の許可申請については、昨年から「登記されていないことの証明書」の提出義務がなくなりました。

※ 後見開始等の審判があるとその旨の登記がされます。「登記されていないことの証明書」とは、成年後見人等の登記がされていないことを証明するものです。

任意後見とは

 十分な判断能力がある方が、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ任意後見契約を結んでおき、判断能力が不十分になったときに、その契約に基づいて任意後見人が本人を援助する制度です。

 信頼できる方をあらかじめ選んでおくことができます。

 任意後見契約は、公正証書で作成しなければなりません。

 また、この契約は、家庭裁判所が「任意後見監督人の審判」をした時から、その効力を生じます。

被後見人が死亡した場合

 被後見人が死亡した場合、成年後見は当然に終了し成年後見人の権限を行使することはできなくなります。

 ただし、緊急に必要なことがあるときは、相続人が相続財産を管理することができるまで、建物を修理したり、支払いを求められている被後見人の医療費等を支払うことができます。

 また、家庭裁判所の許可を得れば債務弁済のためにの預貯金の払い戻しや電気、ガスなどの解約手続等もできます。

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